藍あそび 「2020 生葉染めチャレンジ <第1弾>」
開催日時 | 2020年8月22日(土) |
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場 所 | センターコモン |
講 師 | 南部步美さん(藍染め屋 aiya) |
イベント日記
2020 生葉染めチャレンジでは、タネ獲り含め、4回シリーズでタデアイ・生葉染めの魅力に迫ります。
第1弾
〜生葉染めはシルクじゃなきゃダメなの?〜
目次
|いざ検証
|待望のタデアイ収穫。そして生葉染めへ
7月の長雨をのりきり、順調に育った藍あそび花壇のタデアイは収穫期を迎えています。
実は、生長がよすぎて早々に葉が硬くなったので、8月初旬に一回目の刈り取りを済ませました。
(こっちは乾燥葉にして使います。)
なので、今回が 二回目の収穫 です。
夏場の晴天のおかげで、刈っても二〜三週間ぐらいで また伸びてきます。
(生命力はんぱない。)
さっそく刈り取って、新鮮なうちに生葉染めの作業に移ります。
|生葉染めのメカニズム
はじめに、タデアイの葉を粉砕して組織を破壊します。これは、組織中の酵素を活性化させるための工程で、この酵素が葉の中に含まれている「インディカン」(藍色のもととなる物質) を「インドキシル」に変えていきます。
つぎに、粉砕してジュース状になったインドキシルたっぷりの生葉液に布を浸していきます。インドキシルは水溶性 なので、布の内部にしみこみ、繊維に付着します。
そして、繊維の奥まで浸透したインドキシルは、ここで水や空気中の酸素によって酸化し、「インディコ」という青色の物質になり、繊維が青く染まります。インディコは水に溶けにくい性質をもつため、洗っても簡単には落ちません。
さて、今回の企画はここからが本題。
しっかりと堅牢な青色に染まるには、さらに重要なポイントがありまます。
それは、水溶性のインドキシルにもう一つ特徴があって、タンパク質と親和性がある ということです。つまり、タンパク質成分をもつものに、ペタリとくっつくのです。
くっついた状態で酸化すれば、青色のインディコによって染まった状態になり、くっつかないで酸化すれば、インディコはあてどなくさまようこととなります。
なので、
①シルク(絹)・・・・タンパク質が主成分
→ 青色に染まりやすい。
②コットン(木綿)・・・・セルロースが主成分
→ 染まりにくい。
③化繊・・・・・セルロースが主成分
→ 染まりにくい。
というわけです。
どうりで生葉染めのワークショップにシルクが多いはずです。
ちなみに、
②と③をタンパク質でコーティングして 染まりやすくする という方法があります。薬品を使って化学的に処理することもできますが、当然、天然素材でも可能です。
簡単なのは、豆乳づけ です。
他にも、大豆をつぶした豆汁(ごじる)につける方法が知られていますが、こっちはちょっと手間がかかります。
では、百聞は一見にしかず。
どれぐらい染まるのか?染まらないのか? を 実際に確かめてみたいと思います。
| いざ検証
今回は、シルク(①)、 コットン(②)、 化繊(③) の3種類の布地をつかい、 無処理(A)、豆乳づけ(B) で 比較検証してみました。また、時間経過による色あせ具合も同時に観察してみました。
意外にも化繊(③)がよく染まり善戦しました。ポイントは繊維に どれだけ絡んで定着するか なので、今回使用した化繊は、インドキシルが絡みやすい繊維素材だったということでしょう。コットン(②)の方は色ムラが顕著。やっぱりシルクが一番濃く堅牢に染まっていました。
セルロース主成分の布のみ豆乳づけ比較を検証したのですが、やはり豆乳づけ(B)を施したほうが、②③とも青色が濃くなりました。
時間経過の比較では、天日干しで空気にさらすことで酸化が進み、色が濃くなっているのが写真( 染色直後 30M と 1H の比較 )からよく分かります。一転して、翌日には色のトーンが落ち着き、全般的に少し薄くなっています。時間経過で色が若干落ちるので、初めは気持ち濃いめに染め上げるのがポイントのようです。
今回の検証結果を色の濃い順にランクづけすると
1位:シルク (①) – 無処理(A)
2位:化繊 (③) – 豆乳づけ(B)
3位:化繊 (③) – 無処理(A)
4位:コットン(②) – 豆乳づけ(B)
5位:コットン(②) – 無処理(A)
となりました。
|生葉染めっていいな
下の写真は、検証した日から2週間ほど経過したあずま袋です。さらに色が落ち着いてきました。
生葉染めは、もう一つの藍染め技法である「建て染め」※1とくらべて、色あせするスピードが早いですが、手軽に染められるが魅力です。
タデアイの葉が生長するのを待って、夏にまた染めればいい。
そう考えれば、夏が待ち遠しくなります。
@homeでは、日々の暮らしに季節の彩りを添える、パッシブタウンの歳時事のひとつとして、この生葉染めを位置づけています。なので、この場所にタデアイの花壇をつくりました。
そして、この体験を多くの方々と共有したいと考え、今回の生葉染めチャレンジの最終回に、収穫したタネの配布を考えています。
興味のある方は、最後までこの企画をお見逃しなく。
※1「建て染め」 乾燥葉を発酵させて作る蒅(すくも)を主原料にして染める技法です。蒅の中では、インディカンはインディコになっています。水に溶けないインディコを発酵させて、水溶性の「ロイコインディコ」という形にします。それが繊維にしみこみ、繊維の中で酸化してインディコに戻り、繊維が青色に染まるという仕組みです。発酵は蒅の中の微生物が働いておこります。微生物はアルカリ性の環境で活動するため、たえず蒅をアルカリに保つ必要があり、手間も時間もかかります。(南部さんが思考錯誤して育てているのがコレです。)また、ロイコインディコはセルロースにも親和性があるため、コットン(木綿)でも染められます。 |
次回(第2弾)は、タデアイの「花」の魅力を取り上げます。お楽しみに。
検証サポート_阿部、藤井
レポート編集_高橋